マスターオブワインへの道のり(2)

(長らくご無沙汰していた報告を、アップデートしますIMG_9816

Institute of Mater of Wine(IMW)よりプログラムへの受け入れを許容された(受験の合格通知)のが、昨年(2014年)の10月下旬。その時点で、翌2015年6月の第一試験(First Year Assessmentと呼ばれる)までの年間(実働は、8ヶ月間)受講料($4,850ほど)を一括払いし、世界3拠点で展開されるMWのプログラム(ヨーロッパ、アメリカ、オーストロアジア=オセオニア+アジア)のひとつを選びます。当方は、一年目は北米プログラムに所属することにしました。本拠地は自宅の在るサンフランシスコ、及びナパなので、非常に便利であり、6月の試験日には、なんと歩いて試験場まで行けるといる素晴らしい地の利です。

 

(14年9月。当時IMW チェアマンだったJean-Michel Valette MWに、友人と、MWに応募する旨を報告)

その後、すぐに世界各地で開催されるマスタークラス(MW主導で行われる一日のコース)や視察旅行、一週間監禁される地獄の?泊まり込み合宿(Residential seminar)など出席する合間に、世界各地のMWや受験生(主に同じ時期に入った一年生)のネットワークを構築し、6月8日の試験日まで切磋琢磨して来ました。

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15年に入ってからは、ヨーロッパ、オーストラリアの視察や取材の合間に、国際ワインライター総会やカリフォルニア在の醸造家、ブドウ農家の取材で、数週間ずつ留守にすることが多く、試験の前の一ヶ月は自宅監禁の状態を作り、一日12時間から15時間勉強して、何とか遅れを取り戻そうとラッシュ。お陰で?、知らない間に十円玉ハゲができていたり(美容院でヘアカットをしている時に、美容師に指摘されるまで気がつかなかった!)、体重が増え続けて気がついたらデブになって?いたりと、まったく頂けない日常。

(15年3月 MW一年生向けボルドー修学旅行にて。4人とも北米のプログラムに所属していた、同級生とボルドー市内で乾杯。)

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一年目の試験は6月8日の朝の9時に世界3箇所で一斉に行われました。ありがたいことに(というか、計画通り)試験の会場は、サンフランシスコの自宅から歩いて10分にある、コンスタレーション ブランド(写真左)というワインの大手企業で開催されました。他にも一人市内の同級生がいましたが、他は全て全米、カナダ、アジアからの受験生。時差など大変だったことでしょう。

会場に早めに到着し、持参した自分専用のワイングラスを12個、指定された受験席にセットアップします。ちなみに、MWのプログラムに入って直ぐに悩んだのが、このグラス選び。MWの試験(一年目のレヴェル1試験と、合格した場合に、数年以内に受けるべき最終のレヴェル2試験)は勿論、世界中で開催されるMWの合宿やクラスにも、専用のグラスの持参が義務づけられます。ワインはとてもデリケートなしろもので、グラスによって味が変わります。MWになろうと決めた時点で、一生使うグラスウェアを決めるのが常識とされ、自宅でもこうして決めたグラス以外でワインを利き酒しないと決めています。そして選んだのは、一番典型的なリーデルの汎用グラス。理由はシンプル。これがワイン審査に一番使われるグラスであり、世界中どこに行っても、自分のグラスが破損したり、持参出来なかった場合でも、現地調達できそうだから。後で知ったのですが、同級生の中でもかなり上質で大振りのグラスを選んだ場合は、逆にワインの味が引き立ちすぎて(おいしくなりすぎて)、質の悪いワインでも美味に感じるので、利き酒評価には良くないとのことでした。

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一年目の試験は、午前中がPractical examination と呼ばれるワインの目隠し審査。これは、12本のワイン(赤、ピンク、白、泡、酒精強化酒なんでもあり)を利き酒しながら、2時間15分以内に全てのワインに関する質問に、ミニ論文方式で筆記します。例えば、ブドウ品種と生産地についての記述を、醸造と気候について分析しながら結論づけるというのが、基本的な質問ですが、これは飽くまでも自分で利き酒した風味に基づいての理論でなければなりません。また、質問の数も一つのワインに付き3〜4種もあるので、ワイン一つにつき10分程度で、試飲、分析、記述と結論を完結せねばならず、悠長に試飲ノートを書いている暇もありません。

(左が典型的な試験用グラス)

短いランチブレークの後は、理論の試験。一題目は全員回答義務があり、2題目は2つの質問から好きな方を選べる方式。2題を2時間で、小論文に仕上げますが、大切なのは栽培、醸造、ワイン法などの質問であれば、きっちりと数字と実例を各所に詳細に盛り込むこと、例えば今回義務づけられた第一問目は、「世界各地で生産される上質のワインにつき、その基になるブドウが栽培される地域において、ブドウの成長期における「水の影響」について、考察、結論づけよ」というものがあります。当然、「上質ワイン」「成長期」「水の管理」といったキーワードは、イントロの部分で定義をする必要がありますが、本文中多くの実例を上げなければなりません。それも、一つの例に付き、3つ実例を挙げることが好ましいとされます。まずは、地場(当方であれば、カリフォルニア)の例、それから必ずヨーロッパ、そしてもう一つの新世界(カリフォルニアに対して期待される例は、オーストラリアやニュージーランド)の3カ所の例を挙げるという風に。

実を言うと、こういう実例を視察、記録する為にこの数年世界中のワイン産地を廻っていたといっても良い訳で、膨大な資料をコンピューターに集めなさい!というMWのアドヴァイスのもと、すこしづつ着手していた矢先の試験でした。実例では、例えばブルゴーニュのロマネコンチの畑ではオベール ド ヴィレーヌが、、、という記述ではアバウト過ぎてアウトで、DRCのどの畑(例えばバイオダイナミック農法で3.5ヘクタールのリシュブール畑で耕しているピノノワールはという具合に)で、誰が(実際にDRCの畑を管理する耕作人)という固有名詞をしっかりと記述しなければなりません。

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さて、試験を終えた後には感想を、同級生同士で話し合いました。大部分は、「恐れていた理論より、プラクティカルの方が厳しかった!落としたかもしれない、、、」と心配する向きが大勢を占めました。自分の感覚では、「落ちてはいないだろう。理論も試飲も、まず、大丈夫」という感想でしたが、勿論7月の中旬まで正式なお沙汰があるまでは、安心出来ません。しかしながら、受験者全てに共通したのは、『燃え尽き症候群』。私も試験の後、3週間以上はワインアレルギーで、全く飲む気が起きず、もっぱらビールやら日本酒を飲んでいました。また、何十冊と読んできたワインの教科書は、その後手をつけられず、居間に置きっぱなし状態、、、。

(もう一人の日本人受験者で、一緒に合格した安田まりちゃんと、試験の夜に「お疲れさまディナー」)

そして、7月17日は結果発表日。結果を発信するロンドンとは時差があるので、朝起きだしてメールを見たら、「合格」通知。正直、喜んでよいのか、これから10倍は厳しくなるであろう更なる受験勉強の日々を、憂いて良いやら。祝杯をあげる気分にもなれず、、、。(とはいえ、友人達がみんなとっても喜んでくれて、お祝いを受けました!)

ちなみに、ほんちゃんの2次試験は、丸4日間に渡る、それはそれは身を削るような試験となります。

 

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