11 月14日『英語でワインを語る力』をつける講座

現在登録されている受講者のプロフィールを鑑み、講義は日本語のワイン知識をベースに、英語での『コニュニケーションスキル』を向上していくことに力点をおきます。以下、ざっと要点をご紹介します。

1)語彙力

論理的で的確なワインの表現手法を学びます。ワインの酸味やタンニンは、品種により『形容詞』などが異なります。単に高低(酸味が高い、低いー>high acid, M+ tanninなどの)だけでは、思い込みとみなされることもあります。誰が聞いても、意図が伝わる語彙力を築いていきましょう。例:refreshing, fresh, crisp, tart, sharp, persisting, mouth-watering, searing acidity などはどの品種に使うか?

2)構成力 = 英語と日本語の決定的な違い

発想が逆とも言える日本語と英語のカルチャーは、英語が流暢な日本人の英語でも、伝わりにくいのです。まずは、論理的に何を伝えたいのか、という構成をしっかり考える練習をします。その上で、手短な文章や言葉で伝える能力を育成しましょう。

例題として、『海外のワイナリーにアポイントメントを入れる依頼書の書き方』『自分の簡単な紹介文』『ブドウ栽培、醸造、ワインビジネスなど全般的なテクニカルな質問書のポイント』など、実践に役立つ作文を行います。その際に日本人の陥りがちなエラーに照準を当て、考え方のズレや習慣の違いを含めて、添削していきます。

3)知識と表現の違い

世界のワイン業界の主流は、英語圏にあります。日本で頻繁に使われる『ヴァンナチュール』『シェフソムリエ』などは仏語(や原語)の日本語訳を英語にした場合、定義も発音も違ったものになってしまいます。英語でワインを語る場合、日本語からの英訳では、意図が変わってしまうことも多々あります。

ちなみに、以下の英語の文章は、どこがおかしいのでしょうか?問題は語学力に留まらず、発想や質問者の知識も疑ってみてください。

What is the average size of your vineyard?

How old are your “old vines”?

また、誰かがこんな事を言ったとして、あなたはどうやって更に相手に質問をしますか?

“We don’t spray chemicals that much.  We follow organic viticulture pretty much.”

“Our wine is natural”

“The acidity of this wine is very high and fresh.  This pairs well with seafood”

当日は、いろいろな角度から英語でのワイン論議を行います。単に英語でワインを習得したいという方だけではなく、日米・英のワイン(ビジネス)に対する発想の違いなどを知りたい方も歓迎します。質疑応答は日本語で行います。

 

「マスター・オブ・ワインへの道」ー 執筆開始にあたって

マスター・オブ・ワイン(MW)という雲の上に存在するワインの神様のような資格が在ると知ったのは、ワインの勉強を本格的に始めてから。それまでは、マスター・ソムリエ(MS)が業界のトップだと思っていて、実際欧米で最も権威のあるCourt of Master Sommeliers(ソムリエ協会)というイギリスの機関が、世界で初めてカリフォルニアで開講した「3ヶ月ソムリエ短期集中受験コース」に入学したのでした。この前代未聞の難問コースは、通常であれば5年間の実技と理論を勉強してから受ける、ソムリエレヴェル2という資格を何と3ヶ月で受験するというもの。

生来のワイン好きが高じて、現役のニューヨーク金融時代(80年代から01年まで)には、わざわざナパヴァレーに通ったほど。9.11を機に、業界からリタイアしてから、一生涯追求してもまだ余り在る「何か」を模索していました。そして、自分の特技(語学力、コミュニケーションスキル)とパッション(ワイン、旅、食と異文化)を最大に活かせる今のキャリアーに辿り着いたわけです。

3ヶ月の受講後、ソムリエ資格2(正式なバッジを得て、ミッシェラン星付きなどの格式のあるレストランに勤めるソムリエが典型)を取得。詰め込み暗記と典型ワインの試飲一辺倒だったソムリエ受験勉強で身につけたワインの「基礎知識」に自信を得たものの、なにかしらの物足りなさを感じておりました。もっと奥行きの深い、幅広いワインの知識が欲しい、、、。ブドウ栽培からワイン醸造に到る複雑な『農芸化学』と『醸造技術』を学び、世界に広がるワイン地域の実態(ワイン法、ブドウ/ワインのカテゴリーやビジネス・プラクティスなど)を認識し、それらの 国際ワイン交易を司る仕組みを知りたい。

更には、ソムリエのトレーニングで身につけたワインの表現力だけでは、何か忘れ物をしたような気になります。例えば、そのワインの風味が「収穫したばかりのフレッシュなピンクグレープ・フルーツ」なのか、それとも「イエロー・グレープフルーツの皮の風味」なのかに心を砕いても、大して意味がないように感じたのです。

私が知りたかったのは、柑橘類の風味はどこからくるのか?そのブドウ品種独特のものなのか、気候や土壌が影響しているのか?作り手の手腕が関わってくるのか?という部分。そして、目隠し試飲をするのは、ワインや、どのブドウの名前をあてるゲームではなく、品種、地域、製造法も含めて、そのグラスの中から語りかけて来る「何か」を解析することだと思ったのです。正に、そういう全ての知識を体現する存在として、マスター・オブ・ワインに注目したのでした。

そこで早速、ロンドンのInstitute of Masters of Wine(マスターワイン本部)を訪問。いかにして「最短距離で」MWになれるのか?という図々しくも大胆な質問をしたのでした。そしてそのアドヴァイス通り、3年という短い期間で応募資格を得て、本年度(2014)のMWプログラムに受け入れられました。これから数年の間に数々の試験とチャレンジがありますが、そこに至る過程を公開することによって、MWを目指す後進のすこしでも役に立てばと願います。

公開するということは、成功だけではなく失敗談も多々ある訳で、それらも含めて一緒に経験して行って下されば、幸いです。MWという狭き門は、私の尊敬する先達をも拒否して、なかなか通過することが難しい道です。そのうちの一人で、私の先生に当たるワインメーカーが、最近「私のMWへの道は本年を持って閉ざされました」と題したメッセージをソーシャルメディア に公開しました。

「長年にわたってMWの試験を受けて来ましたが、本年が最後のチャンスでした。残念ながら期限切れとなり、私のMWへの道は閉ざされましたが、そこに至るまでに学んだ物は大きい」から始まるメッセージで、読んでいて感動しました。そこには、「失敗したから恥ずかしい」という小さな自尊心の欠片もなく、堂々とその結果を公表する。なんという大きな人間だろうと思いました。

そしてMWにしても、MSにしても「この道は一人では実現しない。皆で分け合って進むのだ」という同士の絆とでもいうスピリッツを改めて感じました。わたしも彼女のメッセージを読んで、今から始まったばかりのMWへの道のりを、皆さんとシェアーしてきます。これからMW或はMSという業界最高峰を目指す方や、資格をとらずともワインを愛し、すこしでもワインの世界の深さを学びたいという方の、ほんのすこしのお役に立てばと願います。  (2014.12.20サンフランシスコの自宅にて)

 

マスターオブワインロンドン本部

マスターオブワインへの道のり(2)

(長らくご無沙汰していた報告を、アップデートしますIMG_9816

Institute of Mater of Wine(IMW)よりプログラムへの受け入れを許容された(受験の合格通知)のが、昨年(2014年)の10月下旬。その時点で、翌2015年6月の第一試験(First Year Assessmentと呼ばれる)までの年間(実働は、8ヶ月間)受講料($4,850ほど)を一括払いし、世界3拠点で展開されるMWのプログラム(ヨーロッパ、アメリカ、オーストロアジア=オセオニア+アジア)のひとつを選びます。当方は、一年目は北米プログラムに所属することにしました。本拠地は自宅の在るサンフランシスコ、及びナパなので、非常に便利であり、6月の試験日には、なんと歩いて試験場まで行けるといる素晴らしい地の利です。

 

(14年9月。当時IMW チェアマンだったJean-Michel Valette MWに、友人と、MWに応募する旨を報告)

その後、すぐに世界各地で開催されるマスタークラス(MW主導で行われる一日のコース)や視察旅行、一週間監禁される地獄の?泊まり込み合宿(Residential seminar)など出席する合間に、世界各地のMWや受験生(主に同じ時期に入った一年生)のネットワークを構築し、6月8日の試験日まで切磋琢磨して来ました。

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15年に入ってからは、ヨーロッパ、オーストラリアの視察や取材の合間に、国際ワインライター総会やカリフォルニア在の醸造家、ブドウ農家の取材で、数週間ずつ留守にすることが多く、試験の前の一ヶ月は自宅監禁の状態を作り、一日12時間から15時間勉強して、何とか遅れを取り戻そうとラッシュ。お陰で?、知らない間に十円玉ハゲができていたり(美容院でヘアカットをしている時に、美容師に指摘されるまで気がつかなかった!)、体重が増え続けて気がついたらデブになって?いたりと、まったく頂けない日常。

(15年3月 MW一年生向けボルドー修学旅行にて。4人とも北米のプログラムに所属していた、同級生とボルドー市内で乾杯。)

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一年目の試験は6月8日の朝の9時に世界3箇所で一斉に行われました。ありがたいことに(というか、計画通り)試験の会場は、サンフランシスコの自宅から歩いて10分にある、コンスタレーション ブランド(写真左)というワインの大手企業で開催されました。他にも一人市内の同級生がいましたが、他は全て全米、カナダ、アジアからの受験生。時差など大変だったことでしょう。

会場に早めに到着し、持参した自分専用のワイングラスを12個、指定された受験席にセットアップします。ちなみに、MWのプログラムに入って直ぐに悩んだのが、このグラス選び。MWの試験(一年目のレヴェル1試験と、合格した場合に、数年以内に受けるべき最終のレヴェル2試験)は勿論、世界中で開催されるMWの合宿やクラスにも、専用のグラスの持参が義務づけられます。ワインはとてもデリケートなしろもので、グラスによって味が変わります。MWになろうと決めた時点で、一生使うグラスウェアを決めるのが常識とされ、自宅でもこうして決めたグラス以外でワインを利き酒しないと決めています。そして選んだのは、一番典型的なリーデルの汎用グラス。理由はシンプル。これがワイン審査に一番使われるグラスであり、世界中どこに行っても、自分のグラスが破損したり、持参出来なかった場合でも、現地調達できそうだから。後で知ったのですが、同級生の中でもかなり上質で大振りのグラスを選んだ場合は、逆にワインの味が引き立ちすぎて(おいしくなりすぎて)、質の悪いワインでも美味に感じるので、利き酒評価には良くないとのことでした。

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一年目の試験は、午前中がPractical examination と呼ばれるワインの目隠し審査。これは、12本のワイン(赤、ピンク、白、泡、酒精強化酒なんでもあり)を利き酒しながら、2時間15分以内に全てのワインに関する質問に、ミニ論文方式で筆記します。例えば、ブドウ品種と生産地についての記述を、醸造と気候について分析しながら結論づけるというのが、基本的な質問ですが、これは飽くまでも自分で利き酒した風味に基づいての理論でなければなりません。また、質問の数も一つのワインに付き3〜4種もあるので、ワイン一つにつき10分程度で、試飲、分析、記述と結論を完結せねばならず、悠長に試飲ノートを書いている暇もありません。

(左が典型的な試験用グラス)

短いランチブレークの後は、理論の試験。一題目は全員回答義務があり、2題目は2つの質問から好きな方を選べる方式。2題を2時間で、小論文に仕上げますが、大切なのは栽培、醸造、ワイン法などの質問であれば、きっちりと数字と実例を各所に詳細に盛り込むこと、例えば今回義務づけられた第一問目は、「世界各地で生産される上質のワインにつき、その基になるブドウが栽培される地域において、ブドウの成長期における「水の影響」について、考察、結論づけよ」というものがあります。当然、「上質ワイン」「成長期」「水の管理」といったキーワードは、イントロの部分で定義をする必要がありますが、本文中多くの実例を上げなければなりません。それも、一つの例に付き、3つ実例を挙げることが好ましいとされます。まずは、地場(当方であれば、カリフォルニア)の例、それから必ずヨーロッパ、そしてもう一つの新世界(カリフォルニアに対して期待される例は、オーストラリアやニュージーランド)の3カ所の例を挙げるという風に。

実を言うと、こういう実例を視察、記録する為にこの数年世界中のワイン産地を廻っていたといっても良い訳で、膨大な資料をコンピューターに集めなさい!というMWのアドヴァイスのもと、すこしづつ着手していた矢先の試験でした。実例では、例えばブルゴーニュのロマネコンチの畑ではオベール ド ヴィレーヌが、、、という記述ではアバウト過ぎてアウトで、DRCのどの畑(例えばバイオダイナミック農法で3.5ヘクタールのリシュブール畑で耕しているピノノワールはという具合に)で、誰が(実際にDRCの畑を管理する耕作人)という固有名詞をしっかりと記述しなければなりません。

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さて、試験を終えた後には感想を、同級生同士で話し合いました。大部分は、「恐れていた理論より、プラクティカルの方が厳しかった!落としたかもしれない、、、」と心配する向きが大勢を占めました。自分の感覚では、「落ちてはいないだろう。理論も試飲も、まず、大丈夫」という感想でしたが、勿論7月の中旬まで正式なお沙汰があるまでは、安心出来ません。しかしながら、受験者全てに共通したのは、『燃え尽き症候群』。私も試験の後、3週間以上はワインアレルギーで、全く飲む気が起きず、もっぱらビールやら日本酒を飲んでいました。また、何十冊と読んできたワインの教科書は、その後手をつけられず、居間に置きっぱなし状態、、、。

(もう一人の日本人受験者で、一緒に合格した安田まりちゃんと、試験の夜に「お疲れさまディナー」)

そして、7月17日は結果発表日。結果を発信するロンドンとは時差があるので、朝起きだしてメールを見たら、「合格」通知。正直、喜んでよいのか、これから10倍は厳しくなるであろう更なる受験勉強の日々を、憂いて良いやら。祝杯をあげる気分にもなれず、、、。(とはいえ、友人達がみんなとっても喜んでくれて、お祝いを受けました!)

ちなみに、ほんちゃんの2次試験は、丸4日間に渡る、それはそれは身を削るような試験となります。

 

何故MSではなくMWを選んだのか

今年の前半までは、Court of Master Sommeliers(MS)のマスター・ソムリエ資格を受験する比較的若いグループに所属し、週一度の目隠し試飲に参加しておりました。私自身はマスター・オブ・ワイン(MW)を目指しておりますが、Courtのソムリエ資格も持っており、食の中心のSFには、ソムリエ資格を目指す人が比較的多く、MS受験グループのほうが比較的見つけ易い訳です。

とはいえ、この秋晴れてInstitute of Masters of Wineの正式通知を受け、MWの受験一年生となりました。そのつてで、やっとSF近郊でMWを目指す人をみつけ(米国でMWを目指す人はMSに比べると、希少)週に一度集まってMW方式の試飲練習会を開いています。

自宅での試飲セットアップ

(自宅で目隠し試飲のセットアップ)

マスター・ソムリエとマスター・オブ・ワインの試験は、かなり趣が異なります。それは、レストランで給仕をするソムリエという仕事柄、ブラインド(目隠し)試飲の試験も、いわゆる短い理論といわれる試験も、全て口頭で行います。試験に出されるワインは、「クラシック」で「典型的(ベンチマーク)」と評されるものが主で、例えばカベルネなら、ナパやボルドーの新樽を使ったどっしりしたものであるとか、ソービニョン・ブランであれば、樽を使わずフレッシュに仕上げたロワールのサンセールやニュージー・ランドのマールボローといった具合。試飲試験では、ワインの香りや味を表現する的確な力や、ワインの種類を当てることに重きを置いているきらいがあります。それは、お客様にワインを売るという仕事柄、当然の流れと言えるでしょう。

反して、ワインメーカーや、アカデミックなバックグラウンドをもつ業界人が主な受験生であるマスター・オブ・ワインの試験は、全て論文形式の筆記試験。目隠し試飲は、12種類のワインを3日間にわたって(理論は4日間)おこなわれますが、出題されるワインは典型的なワインばかりではなく、普通の人はあまり飲んだことの無い品種や国のもの、或は同じカベルネでもアルゼンチンやニュージー・ランドの新興国のものが混ざります。これを試飲した上で、どんな製法で作られたワインか、どこの国のどの品種のワインか、そしてその質と市場価値などを、論理的に、そして飽くまで目の前のグラスから得た情報だけを頼りに、理論展開して行きます。

そんな訳で、一回の勉強会にはかなり時間をとられます。スピードを重んじるソムリエの勉強会は、一つのワインに4分が目処の(その場で飲みながら答える)タイムリミット方式で、そのあと出席者の討論が5分程、計10分から15分あれば次のワインにすすめます。翻ってMWの勉強会は、まず12種類のワインを各自が試飲しながら、きちんと文章に落とします。このタイムリミットが2時間15分。その後、参加者で分析と討論を行うので、最低3時間半はかかり、大変な時間(と経費、毎回12本の違うワインを用意する)をコミットせねばなりません。

しかも対象となるワインは、赤白ロゼの他に、スパークリング・ワインとデザート・ワイン( ポルト、シェリー、マデラの酒精強化酒に、ソーテルネ、トカイなどの貴腐ワインなど)という守備範囲の広さ。一人で勉強するのは、ほぼ不可能です。ですから、何年(或は十何年)もかかるMSやMW受験には「同士(study buddy)」の存在は不可欠。ドキュメンタリー映画のソムSomm(ソムリエの略称で、MSを目指す人達が受験するまでのグループを追ったもの)がまさにその受験過程を追っていますが、スタディグループは全員が合格するまで、何年でも励まし合って、切磋琢磨を続けていくというシステムです。

私が最初に取ったワインの資格は、 ソムリエ。受験の前日に先生(マスター・ソムリエ)に言われた言葉が、今でも忘れられません。

「試験なんで、落ちることもあれば、受かることもある。だから、不合格でどんなに落ち込んでいても、友人(study buddy)の合格をきちんと笑顔で祝ってあげる!大切なことは、『いつ』受かるかではなくて、いつか『受かる』ことさ。」(下はソムリエの資格試験を司るマスターソムリエ教授陣)

ソムリエスクールの教授陣MS

なんで、そんな受験生活しているの?

この数年間、朝から晩までワイン理論の勉強、目隠し試飲、リサーチ という座りっぱなしの受験生活が続いている。特にこの8ヶ月は、追い込み時期で、全くの缶詰だ。集中しているときなど、3日間自宅から出ないなんていうこともある。料理の時間が捻出できず、連日インスタントラーメンにピザという、 生涯で滅多に食べないジュンクフードのオンパレードだ。 気がついたら1日15時間座りっぱなし。毎日ジムに通っていた人間とは思えないCoach Potato振りである。目指しているマスターオブワイン(MW)という試験は、誰に強要されるわけでもない。取る必要もない。しかも膨大な時間とお金がかかり、更に長期にわたる大きな精神的投資が要求される。つまりは滅茶苦茶チャレンジングで、やり甲斐のある「わたし的には」ワクワクするシロモノなのである。

 

ワインの勉強を始めたのは2011年の1月だった。自分の子供のような年代の同級生に混ざり、 ソムリエ受験の3ヶ月講座に通った。春に無事、ソムリエ資格を得たものの、物足りなかった。固有名詞の暗記ばかりで、ベーシックな知識は得たものの、知りたい知識には遠く及ばない。そこで、まずは フランス語を勉強し、夏には、ボルドー、ローヌ、ブルゴーニュでワイン講座を取りながら、ヨーロッパ各地のワイン地域を視察した。どうせ目指すなら最高峰のマスターオブワインだろうとのイメージがあり、ロンドンの本部(Institute of Masters of Wine)を訪問した。図々しくも「最短距離でMWになる方法」を質問。そこで、Wine and Spirits Education Trust (WSET)という専門国際機関でレベル4までの資格を得ることが、MW試験の応募資格だと知り、そのままロンドンのWSET本校に向かった。ここでも「最短距離でレヴェル4まで達成する方法」を聞く。「レヴェル1から4までは、4年はかかります」と言われて、「いや、2年でやりたい」と無理を言った。結局、ホテルに戻って自分のコンピュータからWSETレヴェル2のオンライン試験を受け、合格。最初の2レヴェルをとばした。レヴェル3はその秋にロンドン本校のみでオファーしているという「5日間」の超短期コース(通常は6ヶ月のコース)を申し込んで帰国。自宅でその受験勉強をしてから、秋にロンドンに戻り、合格した。SFに戻り、すぐにWSET レヴェル4DiplomaというSFでのプログラムに応募した。ガムシャラに勉強し、13年末には全てのプログラムを終了してしまった。

 

念願のマスターオブワインの受験資格を取得したわけだ。開けて14年は、MW Instituteが4年に一度行う大シンポジュームの年。これに外部者として参加。 世界中から集まったMWやそれを目指す人たちと交流し、彼らの知識と見識、人柄に触れて、改めてその高みを極めてみようと思った。MWのプログラムは毎年秋に世界中で応募が始まる。すぐに応募し、合格。晴れて、MW Studentになった。ワインの勉強を始めて、3年半が経っていた。入ってから知ったのは、そこからの道のりの長さと厳しさだ。試験は 1年後に受ける1日の試験で、半分くらいが振り落とされるらしい(これは無事通過)。次のStage 2という試験が、丸4日間にわたる長〜いホンちゃんの試験だ。毎年6月に世界3拠点で一斉に行われる。6年間受験(チャレンジ)資格があるが、その間にすべての科目に通らなければ退学となる。内容は、理論の5科目(栽培、醸造、 実務、ワインビジネス全般、現状)と、目隠しの試飲に基づく論文だ。この間に大半がドロプアウトしていく。 晴れて試験に合格した後に待っているのは、リサーチと論文書きだ。多くのMWに「結局、何年かかった?」と聞くと、「5〜8年」という答えが多い。勿論その間に諦めなければである。さてさて、今年はその試験に初めて挑戦する。今から、ワクワクしている。でも、その後、3ヶ月が針の筵。なんと結果が分るのは9月だそうな!

 

 

マスター・オブ・ワイン(MW)の強化合宿に出席してきました

毎年一月は、世界の3拠点でMaster of Wine Residential Seminar (強化合宿ゼミナール)が一週間ほど開催されます。これに出席するには、年内にの試験を受ける用意のある生徒のみ。世界に300人程存在するというMW Students(と呼ばれる受験有資格者)ですが、実際にきちんと試験勉強をして受験をする「実質人数」はかなり少ないようです。一旦MWプログラムに受け入れられても、レヴェルについていけずに脱落、或は試験を受けられずに登録だけ10年以上もしている人も多々居るとのことで、これに業を煮やしたMW協会は、本年度から規則を厳しく強化。いわゆる「幽霊生徒」に「時間切れ」を言い渡すことになりました。ということは、今年入った生徒は一番厳しい年にに参加したことになるのですが、協会からは「今年は歴史的な人数の応募者があり、今までで一番厳しい選別を行った」といわれています。

 

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MWの中には、「自分は十何年もかけてやっとMWになった」という人達がいて、彼ら曰く。「今年から入った君たちには、そういう悠長なチャンスは与えられていないので、より厳しい状況になっている」と。よく人から、「MWのプログラムに入ってから実際にMWになるまでに、何年かかるの?」と聞かれますが、これには答えようがありません。「99%は脱落するよ」というとちょっとネガティブなので、公式には「平均4年半」などという「バラ色の見積もり」が発表されています。私の答えは、「世にも稀な天才/鬼才なら3年(実際私が知っているMWに一人こういう人が居る)」ですが、「飛び抜けた秀才で、運が良い人なら6年」と言っています。それ以上の人は?、、、残念ながら期限切れで不合格となります。

まず最初の一年目(といっても実際はプログラムに入るための試験に合格してから、ほんの7ヶ月ほど)に試験がありますが、これは丸一日の試飲と理論のテスト。これに受かった人だけが、2年生(つまりは最終試験準備期間)に進むことができ、一年後、或は2年後に4日間にわたる厳しい試験が待っています。最終試験はワインの目隠し試飲による「ワイン評価」と、小論文を数題書き上げる「理論」からなり、これが丸4日間続く訳です。

その詳細については、次号にて。

 

1月26日

 

マスターオブワインMWになりたい?

6月13日から4日間に渡って開催されるマスターオブワイン協会主催のシンポジュームに来ている。これは4年に一度開催されるいわばMWのオリンピック(だと勝手に位置付けている)。4年前のフレンツェでのシンポジュームに初めて出席したが、その時はWSET Diplomaを超高速で取得したばかりで、『MWになる価値があるか、MWとはどんな人たちで、どんな勉強ができるのか?』というテーマを持って、ワクワクと期待しながら出席したのを覚えている。その時の感想は、「なんて面白い人たち!勉強もやりがいありそうだし、やってみよ」だった。

 

今回はその時の私同様、WSET Diplomaの課程を終了した、或いは終了しつつありサンフランシスコの愛弟子2人と一緒に来ている。彼女たちには、ぜひ同じ体験をして欲しいと思っている。ただし、私の犯した失敗は避けるようにとアドヴァイスしている。その失敗とは、あまりにも超高速で様々なワインの勉強と資格を取ってしまい、あっという間に、MWのプログラムに入ってしまったこと。4年前にMWのchair personには「くれぐれも業界で経験を積んで、相当に知識と経験を得てから、プログラムに入学してください」とアドヴァイスされた。それは、私のように全くワイン業界での経験も、ワインメーキングやブドウ栽培などの知識もなく、簡単にこのプログラムに入った人たちの、その後の苦闘を見て来たからだったのだろう。が、せっかくの親心も馬の耳に念仏で、「私の人生の夢と目標は、すべて最速で達成して来たのだ」という斎藤ゆき美学(というか、蛮勇)で、さっさと入ってしまった。

 

今思うと、例えば大橋MWのように、業界の真っ只中で若い頃から修行を積み、何十年という経験と知識をベースにMWに挑むのが、正統だと思う。またMW協会としても、私のように勉強の成果だけでMWのプログラムに入る人ばかりが増えて、閉口しているのだと気がつく。実際、入学する資格はワイン業界での経験3年(私が入ったときは5年)と言っているが、多くに人は、単にWSETやワインスクールで教鞭をとったり、にわかワインライターやブロガーになって「業界経験」を積もうとしている。それをすべて否定はしないが、そういう人ばかりがプログラムに入ってくると、「あなたはなんのためにMWになりたいの?」と聞かざるを得ない。(実際、昨夜のMWヂィナーに同席した若いスマートな中国人の1年生に、偉そうに説教してしまった:(当人は完璧に同意して、痛く反省する始末。。。_)

 

そういうわけで、私が大切に育てたいと思っている弟子たちには、将来は必ずMWのプログラムに入って来なさい。但し、「大学レヴェルの化学、英語のエッセイ書き、醸造学とブドウ栽培の知識と実技(実際に畑に出て剪定や収穫を経験し、ワインも自費で作ってみる)を体得してから入ってくること。そうでなければ、即戦力で受験勉強にならないから」と諭している。しかも、私がプログラムに受け入れられた年から、受験生には過酷な「時間切れ制度」が導入された。つまりは5年以内にステージ1(一日の試験)とステージ2(四日の試験)を受験し、すべて合格しない人は辞めてもらうというもの。過去のMWたちは10年以上かかってなる人がいたが、今ではそういう贅沢はない。

 

ありがたいことに、弟子たちは私の意図を汲んでくれて、きちんと時間をかけて勉強をする意思があるようだ。それに、彼女たちは身近で、ここ数年の私の無茶な受験生活を目の当たりにしているの。それがどんなに人生の犠牲を伴い、どれだけ体力と経済力を必要とするかが痛いほど分かるらしい。。。とはいえ、今彼女たちの目に映るのは、輝かしいMWとその周りのトッププロの世界で、賞賛と憧れの眼差しだ。ウンウン。私もそうだった。その気持ちを大切にしたいと思う。

 

ちなみに、4年がたち、改めてこのシンポジュームに参加した私の感想といえば、『MWになる価値があるか?」という同じ質問を違う角度で自分に問うている。これは進歩かしらん