アメリカにて、日本ワインを思う

レポートした通り、日本にはワイン法が存在しない。日本酒という古来の文化があっても、ワインという新しい飲み物は、まだ日本文化に根を下ろしているとは言い難い。日本でワインを醸造する場合、ワインメーキングは日本酒の酒造法に基づいて管理される。その結果、欧米で当たり前の材料やテクノロジーも、酒の現場で使われていなければ、適用できない。

さらに問題なのが、「日本ワイン」の法的規定の欠如だ。市場に出回っている8割以上の「日本製」ワインは、大手酒造会社(サントリーやキリンなど)が、チリやオーストラリアなどから格安で輸入した濃縮ブドウジュースをワインに加工して、千円以内で売っているものがほとんど。

「これではいけない」と気がついたのか、或いは、オリンピック景気に備えた外国人目当ての商戦なのか、政府がやっと重い腰を上げた。日本ワイン を、「国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」と定義し、2018年10月30日から法的に適用する。やっと日本も、ワインという 西洋で確立された歴史的飲み物を、我が国の一部として認知したということなのだろうか。

 

とはいえ、現場でぶどう栽培やワイン造りに関わっている方々の苦労は、続いている。まず、ワイン用ぶどうの栽培者が育っていない。 皮が薄く、タネなしで、実が大きいアメリカ出身の生食用ぶどうなどでは、決して良いワインは作れない。それは、植民地時代から、ヨーロッパの移民が、アメリカの地場ぶどうでワインを作ろうとしては、諦めてきた歴史が証明している。しかし日本ではこの生食用のぶどうに高値がついてきた。農家としては、得体の知れない「ワイン用のヨーロッパぶどう」など、 作りたくないというのが本音だ。結果、売れ残った生食用ぶどうを潰して、とりあえず「飲める」ワインを作ってきた悪しき伝統が続いている。

 

今回の取材で出会ったのは、本格的にワイングレープの栽培に取り組む人たちだ。それはフランスやアメリカでワイン造りを学んだ帰国組や、代々のぶどう農家の後継者がワイン造りに目覚めてしまったケース。大企業も広大な自社畑を使って、いろいろなトライアルを行なっている。とはいえ、老齢化が進むぶどう農家は離農を考え始め、逆に簡単にワイン造りをしたいと夢見る若者が、ワインメーカーを目指し始める。こうして、ぶどう不足はますます深刻になる。そして、優良なぶどうからでしか、美しいワインは作れないという当たり前の事実。

 

前号では、日本のナチュラルワイン人気を特集したが、今の日本は「日本ワインブーム」だ。3千5百円も出せば、海外の高品質のワインを購入できるとわかっていても、応援する心情で、日本のワイン(甲州・マスカットベーリーAや、生食用アメリカぶどう=デラウェア、コンコルドで作るワインなど)を買っ

てあげる。実際、膨大なインタビューを通して確信したことは、誰も日本のワインがとても美味しいとは思っていない事実だ。でも「あんなに頑張っているから、応援したい」という。

 

今では筆者も、日本人が日本のワインを応援したいという心情は理解

できる。なぜなら、ワイン造りに全く向かない高温多湿、大雨の風土にもかかわらず、本当に熱心にぶどうやワイン作りを研究し、励む姿を見てきたからだ。とはいえ、ビジネスの視点で見た場合、日本だけで通じる「甘え」が、生産者にも消費者にもある。要は「身内びいき」ということで、国内だけで通じても、海外の厳しい「自由競争」市場では、生き抜いていけないということ。今の日本ワインの質と値段で

は、まだまだ海外では通用しない。そういうアドヴァイスを会う人ごとに

してきた。と同時に、日本ワインの質をうんと上げて、来日する外国人に胸を張って振る舞える酒に成長させて欲しい。そして、その中の一部でも、海外進出に値しうるブランドができたら、、、、と願ってやまない。

 

何故MSではなくMWを選んだのか

今年の前半までは、Court of Master Sommeliers(MS)のマスター・ソムリエ資格を受験する比較的若いグループに所属し、週一度の目隠し試飲に参加しておりました。私自身はマスター・オブ・ワイン(MW)を目指しておりますが、Courtのソムリエ資格も持っており、食の中心のSFには、ソムリエ資格を目指す人が比較的多く、MS受験グループのほうが比較的見つけ易い訳です。

とはいえ、この秋晴れてInstitute of Masters of Wineの正式通知を受け、MWの受験一年生となりました。そのつてで、やっとSF近郊でMWを目指す人をみつけ(米国でMWを目指す人はMSに比べると、希少)週に一度集まってMW方式の試飲練習会を開いています。

自宅での試飲セットアップ

(自宅で目隠し試飲のセットアップ)

マスター・ソムリエとマスター・オブ・ワインの試験は、かなり趣が異なります。それは、レストランで給仕をするソムリエという仕事柄、ブラインド(目隠し)試飲の試験も、いわゆる短い理論といわれる試験も、全て口頭で行います。試験に出されるワインは、「クラシック」で「典型的(ベンチマーク)」と評されるものが主で、例えばカベルネなら、ナパやボルドーの新樽を使ったどっしりしたものであるとか、ソービニョン・ブランであれば、樽を使わずフレッシュに仕上げたロワールのサンセールやニュージー・ランドのマールボローといった具合。試飲試験では、ワインの香りや味を表現する的確な力や、ワインの種類を当てることに重きを置いているきらいがあります。それは、お客様にワインを売るという仕事柄、当然の流れと言えるでしょう。

反して、ワインメーカーや、アカデミックなバックグラウンドをもつ業界人が主な受験生であるマスター・オブ・ワインの試験は、全て論文形式の筆記試験。目隠し試飲は、12種類のワインを3日間にわたって(理論は4日間)おこなわれますが、出題されるワインは典型的なワインばかりではなく、普通の人はあまり飲んだことの無い品種や国のもの、或は同じカベルネでもアルゼンチンやニュージー・ランドの新興国のものが混ざります。これを試飲した上で、どんな製法で作られたワインか、どこの国のどの品種のワインか、そしてその質と市場価値などを、論理的に、そして飽くまで目の前のグラスから得た情報だけを頼りに、理論展開して行きます。

そんな訳で、一回の勉強会にはかなり時間をとられます。スピードを重んじるソムリエの勉強会は、一つのワインに4分が目処の(その場で飲みながら答える)タイムリミット方式で、そのあと出席者の討論が5分程、計10分から15分あれば次のワインにすすめます。翻ってMWの勉強会は、まず12種類のワインを各自が試飲しながら、きちんと文章に落とします。このタイムリミットが2時間15分。その後、参加者で分析と討論を行うので、最低3時間半はかかり、大変な時間(と経費、毎回12本の違うワインを用意する)をコミットせねばなりません。

しかも対象となるワインは、赤白ロゼの他に、スパークリング・ワインとデザート・ワイン( ポルト、シェリー、マデラの酒精強化酒に、ソーテルネ、トカイなどの貴腐ワインなど)という守備範囲の広さ。一人で勉強するのは、ほぼ不可能です。ですから、何年(或は十何年)もかかるMSやMW受験には「同士(study buddy)」の存在は不可欠。ドキュメンタリー映画のソムSomm(ソムリエの略称で、MSを目指す人達が受験するまでのグループを追ったもの)がまさにその受験過程を追っていますが、スタディグループは全員が合格するまで、何年でも励まし合って、切磋琢磨を続けていくというシステムです。

私が最初に取ったワインの資格は、 ソムリエ。受験の前日に先生(マスター・ソムリエ)に言われた言葉が、今でも忘れられません。

「試験なんで、落ちることもあれば、受かることもある。だから、不合格でどんなに落ち込んでいても、友人(study buddy)の合格をきちんと笑顔で祝ってあげる!大切なことは、『いつ』受かるかではなくて、いつか『受かる』ことさ。」(下はソムリエの資格試験を司るマスターソムリエ教授陣)

ソムリエスクールの教授陣MS

なんで、そんな受験生活しているの?

この数年間、朝から晩までワイン理論の勉強、目隠し試飲、リサーチ という座りっぱなしの受験生活が続いている。特にこの8ヶ月は、追い込み時期で、全くの缶詰だ。集中しているときなど、3日間自宅から出ないなんていうこともある。料理の時間が捻出できず、連日インスタントラーメンにピザという、 生涯で滅多に食べないジュンクフードのオンパレードだ。 気がついたら1日15時間座りっぱなし。毎日ジムに通っていた人間とは思えないCoach Potato振りである。目指しているマスターオブワイン(MW)という試験は、誰に強要されるわけでもない。取る必要もない。しかも膨大な時間とお金がかかり、更に長期にわたる大きな精神的投資が要求される。つまりは滅茶苦茶チャレンジングで、やり甲斐のある「わたし的には」ワクワクするシロモノなのである。

 

ワインの勉強を始めたのは2011年の1月だった。自分の子供のような年代の同級生に混ざり、 ソムリエ受験の3ヶ月講座に通った。春に無事、ソムリエ資格を得たものの、物足りなかった。固有名詞の暗記ばかりで、ベーシックな知識は得たものの、知りたい知識には遠く及ばない。そこで、まずは フランス語を勉強し、夏には、ボルドー、ローヌ、ブルゴーニュでワイン講座を取りながら、ヨーロッパ各地のワイン地域を視察した。どうせ目指すなら最高峰のマスターオブワインだろうとのイメージがあり、ロンドンの本部(Institute of Masters of Wine)を訪問した。図々しくも「最短距離でMWになる方法」を質問。そこで、Wine and Spirits Education Trust (WSET)という専門国際機関でレベル4までの資格を得ることが、MW試験の応募資格だと知り、そのままロンドンのWSET本校に向かった。ここでも「最短距離でレヴェル4まで達成する方法」を聞く。「レヴェル1から4までは、4年はかかります」と言われて、「いや、2年でやりたい」と無理を言った。結局、ホテルに戻って自分のコンピュータからWSETレヴェル2のオンライン試験を受け、合格。最初の2レヴェルをとばした。レヴェル3はその秋にロンドン本校のみでオファーしているという「5日間」の超短期コース(通常は6ヶ月のコース)を申し込んで帰国。自宅でその受験勉強をしてから、秋にロンドンに戻り、合格した。SFに戻り、すぐにWSET レヴェル4DiplomaというSFでのプログラムに応募した。ガムシャラに勉強し、13年末には全てのプログラムを終了してしまった。

 

念願のマスターオブワインの受験資格を取得したわけだ。開けて14年は、MW Instituteが4年に一度行う大シンポジュームの年。これに外部者として参加。 世界中から集まったMWやそれを目指す人たちと交流し、彼らの知識と見識、人柄に触れて、改めてその高みを極めてみようと思った。MWのプログラムは毎年秋に世界中で応募が始まる。すぐに応募し、合格。晴れて、MW Studentになった。ワインの勉強を始めて、3年半が経っていた。入ってから知ったのは、そこからの道のりの長さと厳しさだ。試験は 1年後に受ける1日の試験で、半分くらいが振り落とされるらしい(これは無事通過)。次のStage 2という試験が、丸4日間にわたる長〜いホンちゃんの試験だ。毎年6月に世界3拠点で一斉に行われる。6年間受験(チャレンジ)資格があるが、その間にすべての科目に通らなければ退学となる。内容は、理論の5科目(栽培、醸造、 実務、ワインビジネス全般、現状)と、目隠しの試飲に基づく論文だ。この間に大半がドロプアウトしていく。 晴れて試験に合格した後に待っているのは、リサーチと論文書きだ。多くのMWに「結局、何年かかった?」と聞くと、「5〜8年」という答えが多い。勿論その間に諦めなければである。さてさて、今年はその試験に初めて挑戦する。今から、ワクワクしている。でも、その後、3ヶ月が針の筵。なんと結果が分るのは9月だそうな!

 

 

マスター・オブ・ワイン(MW)の強化合宿に出席してきました

毎年一月は、世界の3拠点でMaster of Wine Residential Seminar (強化合宿ゼミナール)が一週間ほど開催されます。これに出席するには、年内にの試験を受ける用意のある生徒のみ。世界に300人程存在するというMW Students(と呼ばれる受験有資格者)ですが、実際にきちんと試験勉強をして受験をする「実質人数」はかなり少ないようです。一旦MWプログラムに受け入れられても、レヴェルについていけずに脱落、或は試験を受けられずに登録だけ10年以上もしている人も多々居るとのことで、これに業を煮やしたMW協会は、本年度から規則を厳しく強化。いわゆる「幽霊生徒」に「時間切れ」を言い渡すことになりました。ということは、今年入った生徒は一番厳しい年にに参加したことになるのですが、協会からは「今年は歴史的な人数の応募者があり、今までで一番厳しい選別を行った」といわれています。

 

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MWの中には、「自分は十何年もかけてやっとMWになった」という人達がいて、彼ら曰く。「今年から入った君たちには、そういう悠長なチャンスは与えられていないので、より厳しい状況になっている」と。よく人から、「MWのプログラムに入ってから実際にMWになるまでに、何年かかるの?」と聞かれますが、これには答えようがありません。「99%は脱落するよ」というとちょっとネガティブなので、公式には「平均4年半」などという「バラ色の見積もり」が発表されています。私の答えは、「世にも稀な天才/鬼才なら3年(実際私が知っているMWに一人こういう人が居る)」ですが、「飛び抜けた秀才で、運が良い人なら6年」と言っています。それ以上の人は?、、、残念ながら期限切れで不合格となります。

まず最初の一年目(といっても実際はプログラムに入るための試験に合格してから、ほんの7ヶ月ほど)に試験がありますが、これは丸一日の試飲と理論のテスト。これに受かった人だけが、2年生(つまりは最終試験準備期間)に進むことができ、一年後、或は2年後に4日間にわたる厳しい試験が待っています。最終試験はワインの目隠し試飲による「ワイン評価」と、小論文を数題書き上げる「理論」からなり、これが丸4日間続く訳です。

その詳細については、次号にて。

 

1月26日

 

11〜12月ワイン レクチャーのアップデート@東京&名古屋

フェースブックでは既に告知済みですが、11月に東京と名古屋で行うワインレクチャーは、既に満員御礼が出ております。追って、現在出席可能な下記のクラスと、増設クラスにつきご案内いたします。

Shall We Wine? with Yuki Saito

Per my Facebook announcement, I am offering an English lecture for the advanced students (WSET diploma, advance, Sommelier certification+).  For those interested, please look for “Yuki’s Lecture” group on Facebook, request for joining the group if not done yet (its admin is Ms Satoko Miura).  Upon joining the group, you can look for the event and push the “going” bottom.

@キャプランアカデミー(港区南青山3−1−31 NBF南青山ビル2F)

@Caplan Academy 3-1-31 Minami Aoyama, Minato-ku, NBF Minami Aoyama Building 2F

  • Advance Wine Lecture in English.     November 14th        7pm-9pm
  • Connecting wine theory and blind tasting
  • Review of wine theory (viticulture, vilification, shipping/storage, wine regulation)
  • Review of tasting basics (sommelier method, WSET grid, Master of Wine approach)
  • Importance of “dry tasting note”
  • Actual blind tasting

11月19日 ワインビジネス 7pmー9pm

  • ブドウ栽培や、醸造手法の違いはワインの価格にどのように反映されるか?
  • 『質の良いワイン』『美味しいワイン』は売れるという神話
  • これからのソムリエや販売業者のモデルとは?
  • こちらの参加は、フェースブックYuki’s Lectureのグループに入り、イヴェント参加のボタンを押してください。幹事は三浦聡子さんです。

12月4日 6pmー9:30pm ワインサロンと試飲、そしてレクチャー

斎藤ゆきプロデュース『カリフォルニアで活躍する日本人プロ』Shall We Wine? 2017の初ヴィンテージの裏話、ブドウ栽培と醸造、そして今年仕込んだ第2弾のワインの紹介など、実際にテイスティングをしながら、現在カリフォルニアで活動を展開している私たちの楽しい話が盛りだくさん。11月に色々なレクチャーに出席してくださった方との、質疑応答も楽しみです。

レクチャーの隣のサロンで、Shall We Wine? 2017の即売もいたします。その他にも、カリフォルニアからワインを持ち込み、即売する予定。

こちらの参加申し込みは、来週から受け付けます。

11月後半の平日 昼過ぎにソムリエ対象のレクチャーを企画中です。こちらも後日のご案内となります。

  • 栽培と醸造知識をしっかりと押さえた上で、ブラインドに取り組む。
  • 勘だよりのブラインドは単なる「ワイン当てゲーム」。論理の積み重ねで、ワインを手繰る。
  • アパラシオンやテロワールを知っていることが、実際のワインスタイルに結びつくか?
  • 今、世界のソムリエに求められる知識と見識とは?

尚、関西方面の方の足が向きやすいように、11月26日にレクチャーと懇親会を設営しました。当初、30名くらいの目処でしたが、現時点で71名の参加者希望者がいらっしゃり、会場を名古屋国際ホテルに移して、現在感じの今浦紀江さんが取りまとめてくださっております。ご希望の方は、フェースブックYuki’s Lecture関西東海のグループに入り、ご連絡ください。レクチャーは2時から4時、懇親会は5時からとなっております。

一人でも多くの皆さんに、国際的な視野からワインのお話をお伝えしたいと思っております。

マスターオブワインMWになりたい?

6月13日から4日間に渡って開催されるマスターオブワイン協会主催のシンポジュームに来ている。これは4年に一度開催されるいわばMWのオリンピック(だと勝手に位置付けている)。4年前のフレンツェでのシンポジュームに初めて出席したが、その時はWSET Diplomaを超高速で取得したばかりで、『MWになる価値があるか、MWとはどんな人たちで、どんな勉強ができるのか?』というテーマを持って、ワクワクと期待しながら出席したのを覚えている。その時の感想は、「なんて面白い人たち!勉強もやりがいありそうだし、やってみよ」だった。

 

今回はその時の私同様、WSET Diplomaの課程を終了した、或いは終了しつつありサンフランシスコの愛弟子2人と一緒に来ている。彼女たちには、ぜひ同じ体験をして欲しいと思っている。ただし、私の犯した失敗は避けるようにとアドヴァイスしている。その失敗とは、あまりにも超高速で様々なワインの勉強と資格を取ってしまい、あっという間に、MWのプログラムに入ってしまったこと。4年前にMWのchair personには「くれぐれも業界で経験を積んで、相当に知識と経験を得てから、プログラムに入学してください」とアドヴァイスされた。それは、私のように全くワイン業界での経験も、ワインメーキングやブドウ栽培などの知識もなく、簡単にこのプログラムに入った人たちの、その後の苦闘を見て来たからだったのだろう。が、せっかくの親心も馬の耳に念仏で、「私の人生の夢と目標は、すべて最速で達成して来たのだ」という斎藤ゆき美学(というか、蛮勇)で、さっさと入ってしまった。

 

今思うと、例えば大橋MWのように、業界の真っ只中で若い頃から修行を積み、何十年という経験と知識をベースにMWに挑むのが、正統だと思う。またMW協会としても、私のように勉強の成果だけでMWのプログラムに入る人ばかりが増えて、閉口しているのだと気がつく。実際、入学する資格はワイン業界での経験3年(私が入ったときは5年)と言っているが、多くに人は、単にWSETやワインスクールで教鞭をとったり、にわかワインライターやブロガーになって「業界経験」を積もうとしている。それをすべて否定はしないが、そういう人ばかりがプログラムに入ってくると、「あなたはなんのためにMWになりたいの?」と聞かざるを得ない。(実際、昨夜のMWヂィナーに同席した若いスマートな中国人の1年生に、偉そうに説教してしまった:(当人は完璧に同意して、痛く反省する始末。。。_)

 

そういうわけで、私が大切に育てたいと思っている弟子たちには、将来は必ずMWのプログラムに入って来なさい。但し、「大学レヴェルの化学、英語のエッセイ書き、醸造学とブドウ栽培の知識と実技(実際に畑に出て剪定や収穫を経験し、ワインも自費で作ってみる)を体得してから入ってくること。そうでなければ、即戦力で受験勉強にならないから」と諭している。しかも、私がプログラムに受け入れられた年から、受験生には過酷な「時間切れ制度」が導入された。つまりは5年以内にステージ1(一日の試験)とステージ2(四日の試験)を受験し、すべて合格しない人は辞めてもらうというもの。過去のMWたちは10年以上かかってなる人がいたが、今ではそういう贅沢はない。

 

ありがたいことに、弟子たちは私の意図を汲んでくれて、きちんと時間をかけて勉強をする意思があるようだ。それに、彼女たちは身近で、ここ数年の私の無茶な受験生活を目の当たりにしているの。それがどんなに人生の犠牲を伴い、どれだけ体力と経済力を必要とするかが痛いほど分かるらしい。。。とはいえ、今彼女たちの目に映るのは、輝かしいMWとその周りのトッププロの世界で、賞賛と憧れの眼差しだ。ウンウン。私もそうだった。その気持ちを大切にしたいと思う。

 

ちなみに、4年がたち、改めてこのシンポジュームに参加した私の感想といえば、『MWになる価値があるか?」という同じ質問を違う角度で自分に問うている。これは進歩かしらん

カリフォルニア在住、日本人プロ集団のワインが、出来上がりました!

お待たせしました!

2017年に立ち上げた『斎藤ゆき監修ワインプロジェクト』(当時の仮称”カリフォルニアなでしこプロジェクト”)より、初めてのビンテージが完成しました。まずは、ブドウ栽培->収穫->醸造->日本への輸出と販売=の全てを行っていく過程で、日本人男性達がメンバーに加わったり、ワイン造りチームが補強されたりと、嬉しい展開が重なりました。

 

最終的な名前は、私の立ち上げたカリフォルニア州の株式会社『Shall We Wine?』と同名で、位置付けは当社の傘下プロジェクトとなります。出来上がったワインは、私のイメージ通り、『カリフォルニアで作るシャブリ』。カリフォルニアの銘醸地、ロシアンリヴァーバレーで40年、ワイン用ブドウの栽培を手がける『中井ヴィンヤード」の美しいシャルドネを早摘みしました。こうすることで、高い酸味を保ち、カリフォルニアでポピュラーな新樽をあまり使わず、マロラクティック発酵も部分的にだけ起こして、キリッとした白ワインに仕上げることができました。

特にナチュラルワインを作ろうと思ってはおりませんでしたが、ブドウが綺麗であったこと、酸味が高く(すなわち、pHが低く)雑菌を寄せ付けずに醸造できたことなども相まって、亜硫酸の添加をかなり低めに抑えられ、フィルターを全くかけずに瓶詰めできるほどの清澄なワインとなりました。ブドウ栽培と醸造過程については、11月より日本で行う販売セミナーで説明したいと思います。

ありがたいことに、既に昨年から購入については、かなりの引き合いをいただきました。とはいえ、少数生産ゆえに数量が少なく、まずは個人のお客様から販売予約を受付したいと思います。別ページ「購入予約申し込み」で、9月より予約希望を募り、最終的な集計を元に、アロケーション(最終確定購入数)を算出していきたいと思います。

このワインは、私個人が大好きな「瓶熟成したシャブリ」を意識して作った「てめえ勝手な」ワインです。8〜10年以上たったシャブリは本当に美味しく、素晴らしい変化を見せてくれるのですが、まず入手が不可能。なので、自分で作って5年後から10年の間に毎年数本づつ開けようと思っております。この話を、一緒に食事をしながらこのワインを飲んでくださっていた大橋健一MWと南アのRichard Kershaw MWに打ち明けたところ、「この低いpHなら熟成できるね!」と言っていただけました。健さん(大橋MW)は、このワインを気に入ったくださったようで、ご自分の会社(Yamajin)で扱うよと、声までかけてくださいました。(感謝!)

11月中旬から12月上旬にかけて、日本でワインの購入説明会を行います。その前に特別プリセールとして、10月30日までにご予約をいただいた方には、一本6,500円でご紹介させていただきます。お申し込みは、前頁(サイトの扉頁)『購入予約申込書』にて、お申込書にご記入ください。11月の一般公開では、希望購入価格を7,500円に設定する予定でおります。尚、事前に予約をいただいている酒販店やレストラン顧客のアロケーションを鑑みて、予約いただいたお望みの数量は保証できないかもしれません。ここのところが申し訳なく思います。ちなみに、日本でこのワインを扱う輸入元は、中井ヴィンヤードのJapan Officeが担当します。まずは、このサイトでお申し込みくださった方には、ご登録のメール宛確認書を差し上げ、決済方法とアロケーションについて、10月以降にご連絡を差し上げあげます。